CULTURE
山あり谷ありだったノーマの歩みが映画に。
May 14, 2016 | Culture | a wall newspaper | text_Michiko Watanabe editor_Yuka Uchida
3年連続、世界の頂点に輝いたのち転落。1位に返り咲くまでの苦闘の4年を追う。
しっかり見といてくれ。間違えるなよ。
あれは2007年1月のことだった。〈ノーマ〉はまだ、ミシュラン1ツ星。予約もすぐに取れた。冬の北欧は夜が早い。約束の時間に伺ったが、暗すぎて、何を食べたかわからなかった。記憶にも残っていない。私の初訪問はさんざんだった。それが2010年、世界のベストレストラン50の1位に選ばれたから驚いた。一夜にして、〈ノーマ〉は世界から予約が殺到する店に変わっていく。一体、なぜ、そうなったのか。その経緯は映画『ノーマ、世界を変える料理』に詳しい。
一度、世界の頂点に躍り出ると、いくら気にしないと思っても、トップを維持していくことへのプレッシャーが消えることはない。今まで誰も見たことも食べたこともない、北欧独自の料理を生み出したレネ・レゼピの苦悩もまた、そこにある。常に新しい食材はないかとアンテナを張り、食材提供者と話し、時には自然の中に身を置いてヒントを探し、スタッフとともに次々と新しい味を作り出していく。いや、作り出さなくてはならない。それが、こういうクリエイティブなレストランの定めなのである。新作への挑戦は試行錯誤の連続、というか、ほぼ大半が失敗だろう。それでも、トライアルをやめることはない。この作業、大変だけれど、未知の世界を切り開く喜びに満ちている。
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